UG_07’s diary

日々の生活で思ったことや気づいたことをまとめています。

【日記】パコ・デ・ルシア 灼熱のギタリスト

昨晩見た映画の話でも。

Amazon Primeにて「パコ・デ・ルシア 灼熱のギタリスト」を見ました。

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パコ・デ・ルシア 灼熱のギタリスト

 パコ・デ・ルシアはスペインのギタリストで、フラメンコの音楽を伝統芸術から現代でも世界的に通用する音楽へと昇華した人です。

 私はアコースティックギターの音色が好きで、作業用BGMとしてよく聞いているのですが、以前Youtubeでこの人が演奏しているのを見たときは、「スペインの情緒も感じられて速弾きもものすごくうまいけど、澄ました顔して演奏していて、お高くとまったいけ好かない人だなー。」という印象でした。初めのアルバムも「天才」という邦題がつけられていますし。

 ただ、このドキュメンタリー映画を見て印象がかなり変わりました。

 小さいころはお尻が大きくて不格好でよくからかわれていたこと、初めから天才としてお高く留まっていたのではなく、フラメンコギターの巨匠にあこがれて師事していたこと、初めはフラメンコを踊るときの歌手であった兄のおまけで海外ツアーに参加していたこと、など、天才がいきなりギターを弾けてそのまま有名になった、というわけではなく、人間らしい成長の時代があったのだなー、と思いました。

 特に印象的だったのが、パコ・デ・ルシアアメリカで当時流行していたジャズやフラメンコ以外の音楽と触れあい、それをフラメンコの音楽として昇華した楽曲を発表して世界に認められていったときに、伝統的なフラメンコ音楽の巨匠たちからその音楽性に対して「フラメンコを汚している。」として認められていなかったこと。そして、それに対してパコ・デ・ルシア自身がフラメンコ界から排除されることを恐れていたことです。

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フラメンコギターの巨匠サビーカス。初めはパコ・デ・ルシアの斬新なフラメンコ音楽を否定したが、後に自らの一番の弟子はパコ・デ・ルシアである、としてその音楽性を認めた。

 天才であれば、自分の音楽性に絶対の自信があり世界から評価されていれば、自分の古巣であるフラメンコ界からどう思われようとかまわない、と思いそうなものですが、それでも「フラメンコ」であることにこだわり、結果的にフラメンコを伝統的な音楽から新しい音楽へと生まれ変わらせたのはすごく人間性があるな、と。

 ジャズの音楽家たちと演奏する中でアドリブをどうやって弾けばいいかわからないと思い悩んだり、TVに出るのを「僕は内気だから恥ずかしい」と言ったり、寡黙なくせに冗談を言って周りを笑わせるのが好きだったり、「天から遣わされた孤高の天才」というより、フラメンコギターが好きな内気な普通の少年が、たまたまギターの才能と音楽の才能があって、それを持て余さずにいかんなく使った、という印象になりました。

 ただ、演奏会での演奏の出来に対して観客の反応は一切気にせず、「自分が満足のいく演奏ができれば、その演奏で客は勝手に満足して喜ぶのだから、とにかく自分の満足のいく演奏ができるようにしている。」、といい、実際に数十年にわたって観客を魅了し続けたのは、さすがとしか言いようがない。

 パコ・デ・ルシアに興味をもった人は、Youtubeで「二筋の川(Entre dos aguas)」を検索してみてください。パコが即興で作って世界中で大ヒットした曲ですが、フラメンコ音楽の独特な音色の面白さ(Am⇒G⇒F⇒E)、強弱で緩急のついたリズム感、あふれ出るフラメンコの情熱が伝わって(引いている本人は澄ました顔していますが。笑)、とにかく聞いていて楽しいです。

www.youtube.com

 それではまた明日。